面白くて夜だけしか読む暇がなかったものの、3日で読み終えた。
小説というのは最初の数十ページはその世界に興味を持つための
グッと堪えなければいけない段階がある気がする。そういう本も多いなと感じる。
ところがこの本は、10ページも読み終わらないうちに私の心をひきこんだ。
最初の章が"青白き死"であるからして、早々に被害者の話が展開される。
説明の文章が上手いからか違和感なく情報が入ってくる。
それからはメインで活動する警察官の推理視点とともに次々と事件を追いかけていくのである。詳しい書き込み操作や、ひょんなことから様々な情報が得られる。その度に推理が走り、また調査へ向かう。
真相に近づくようで近づけないもどかしさもありつつ、少しずつベールが剥がれていくのが何ともたまらなく面白い。
一体物語をどうやって考えていて、どの順で読者に明かそうと思っていたのか、
松本清張の脳味噌を覗き見たいと思ったほどである。
また、今回の事件に関わった者は医者や製薬会社関連であり、その二者の利己的関わり(当然製薬会社は薬をどんどん置いてもらおうと医者に忖度する)がまた興味深く面白い。
小説といえども全くの嘘を書くわけでもないだろうからこう言ったことはある程度取材されているのだろと思う。が、一体どの筋からこういった情報を得ているのか、気になるところである。
この本の中で、被害者が俳句好きであったことから、関係者が作成した俳句についても取り上げられるている。
そのなんともダイナミックで力強く、畏怖を感じるような俳句が好きだ。好きというよりなんとも惹かれるのである。小説の中で使用する俳句まで作ってしまうなんて、流石だ。
俳句関連で、『松尾芭蕉のホモ説に興味を持った老婆』的表現をしている文章があって、そちらはこの本の中で唯一ぷぷと少し笑ってしまった部分である。老婆と表現されるお婆さんが松尾芭蕉がホモであったかもしれないという色恋に興味を持った姿は想像するとなんだか面白い。