「苦役列車」、「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」の2編が収録されていたのだが、私小説で主人公が同じ名前だったからか、続きの物語だと思って立て続けに読んでしまった。
最も、私小説の主人公が10代だった頃から40代の頃の話へ移り変わっただなのである意味続きと言っても過言ではない。人生は一つなぎである。
苦役列車、題名から連想されるように楽しい話ではない。読んでいて気分が良かなるようなものではなかった。だけども、主人公が悲劇のヒロイン気取りではないからだろうか、何か面白く共感できるとこが多々あり、あっという間に読めてしまった。
この章は、父親が性犯罪者になったことにより小学生の頃から人生を狂わされた可哀想な青年の話。かもしれない。
小学生のような自力では生きていけない小さい存在では家族が与える影響は大きい。その子の環境や性格に大きく影響を与えてしまったと思うが、成人近い彼の怠惰な生活態度は見ていて苦しく感じる人もいるかもしれない。
出だしから、自分が経験したことのないような生活が描かれるので興味が惹きつけられた。怖いもの見たさのような、こういう世界が本当にあるんだ、というような知的好奇心もくすぐられる。狭いアパート暮らし、日雇いバイトで日々の生活費を捻出する様を見ると、自室のワンルームが狭い、お風呂が狭くてリラックス出来ないなどと文句を言っていた自分が恥ずかしくもなる。
一方、せっかく汗水垂らして稼いだお金を居酒屋での食事に費やしたり、風俗に使ったり、と余計な娯楽に使い、結局家賃を踏み倒す様は見ていて心地よいものではない。
よく捉えれば、せっかくの人生、刹那的にその日その瞬間自分が楽しいと思えるように過ごしている様はかっこいい生き様かもしれない。日雇いバイトで体を酷使し、家賃や老後の心配のための貯金に回していたのでは、結局誰のための何の人生だ、となることもあるかもしれない。
私小説とはどこまで本当のことを書いているのかわからないけれど、苦役列車の主人公の少年がこの頃西村賢太のような著者になり、このような文書を書いたと思うとその文才には嫉妬する。
西村賢太さんを調べたところ、36才くらいでデビュー、書き始められたようだ。
ある程度苦役列車の内容が本当だとして、デビューに至るまでの人生も覗かせてほしい。私小説になっているのだろうか。
あまりにも長くつらつらと書いてしまったのでこの辺にて。